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2025
新しい片頭痛治療薬「ナルティーク®」が登場します
― 片頭痛治療はここまで進歩しています ―
片頭痛は、単なる「頭痛」ではありません。
ズキズキとした強い痛みに加え、吐き気や光・音への過敏さを伴い、仕事や家事、日常生活に大きな支障をきたす病気です。近年、片頭痛のメカニズムが詳しく解明され、それに基づいた新しい治療薬が次々と登場しています。
今回は、現在の標準的な片頭痛治療の流れと、2025年12月16日に発売される新しい薬、rimegepant(ナルティーク®)について解説します。
片頭痛治療の基本的な考え方
片頭痛の治療は、大きく分けて
① 発作が起きたときの治療(頓服治療)
② 発作を起こりにくくする治療(予防治療)
の2つを組み合わせて行います。
発作時の治療(頓服治療)
片頭痛発作が起きた際、まず使用されるのがトリプタン系薬です。これは片頭痛に特有の神経や血管の反応を抑える薬で、多くの患者さんに高い効果があります。
しかし、
・副作用が強く出る
・心臓や脳の血管に病気があり使用できない、脳血管が細い。
といった理由で、トリプタンが使えない方も少なくありません。
そのような場合、lasmiditan(レイボー®)が使用されることがあります。レイボー®は血管を収縮させない点が利点ですが、めまいや眠気が出やすく、使用を続けることが難しい患者さんも多いのが現状です。
発作を予防する治療
発作が頻回に起こる場合には、毎日内服する予防薬を併用します。代表的なものとして、
- lomerizine(ミグシス®)
- valproate(デパケン®)
- propranolol(インデラール®)
などがあります。これらを数か月継続することで、発作の回数や重症度を減らすことを目指します。
それでも十分な効果が得られない場合には、CGRP関連薬の注射製剤を月1回投与する予防治療を行います。効果は非常に高い一方、経済的な負担や注射への抵抗感から、希望されない患者さんも多いのが実情です。
新しい選択肢「ナルティーク®」とは?
ナルティーク®は、片頭痛の発症に深く関わるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質の働きを直接抑える飲み薬です。これまでCGRPを標的とした治療は注射薬しかありませんでしたが、本剤は日本で初めての経口CGRP受容体拮抗薬です。
ナルティーク®の特徴
- 血管を収縮させないため、トリプタンが使えない方でも使用可能
- 眠気やめまいが少なく、日常生活への影響が比較的少ない
- 発作時の頓服薬として使用できる
- 2日に1回内服することで、発作予防効果も期待できる
海外の臨床試験では、ナルティーク®の予防効果は、月1回注射するCGRP関連薬とほぼ同等であることが示されています。
当院でのナルティーク®の位置づけ
当院では、今のところ、ナルティーク®を「トリプタンが使えなかった患者さんに対する新たな頓服治療の選択肢」として位置づけします。
特に、
・トリプタンが禁忌の方
・レイボー®で副作用が強かった方
にとって、ナルティーク®は大きな福音となる可能性があります。
片頭痛治療は、ここ数年で大きく進歩しています。「仕方がない頭痛」ではなく、「適切に治療できる病気」として、一人ひとりに合った治療を一緒に考えていきましょう。










