03/01,
2026
【32】食べ物と片頭痛のお話
外来で片頭痛の患者さんとお話ししていると、「チョコレートやチーズ、赤ワインは控えた方がいいと聞きました」とご相談を受けることがよくあります。確かに昔から、こうした食べ物は“片頭痛を誘発する”といわれてきました。
けれども実際のところはどうなのでしょうか。
最近の研究では、「特定の食べ物が必ず片頭痛を起こす」という単純な関係は、あまりはっきりしていないことが分かってきました。例えばチョコレートについては、「食べると必ず頭痛が起こる」という強い証拠はありません。実際、私の外来でも「チョコレートがきっかけ」と感じている方はそれほど多くありません。
ここで大切なのは、「食べ物が原因」なのか、それとも「発作の前ぶれとしてチョコなどの甘いものが欲しくなる」のか、という問題です。片頭痛の発作は、頭が痛くなる前から脳の働きに変化が起こり、眠気や気分の変化、甘いものへの欲求などが出ることがあります。そのため、「チョコレートを食べたから頭痛になった」と思っていても、実は“頭痛が始まりかけていたサイン”だった、ということもあるのです。
一方で、アルコール、とくに赤ワインは、比較的はっきりと誘因になりやすいことが知られています。ただしこれも個人差が大きく、「少量でもだめ」という方もいれば、「全く問題ない」という方もいます。チーズやナッツについても同様で、万人に共通する“絶対に避けるべき食品”とは言い切れません。
片頭痛は、ひとつの原因だけで起こるわけではありません。睡眠不足、寝すぎ、ストレス、天候の変化、生理など、さまざまな要素が重なったときに発作が起こりやすくなります。食べ物は、その“最後のひと押し”になることはあっても、単独で強い原因になることは、実はそれほど多くないのです。
ですから、「片頭痛だから、あれもこれも我慢しなければ」と思いすぎる必要はありません。食事は生活の楽しみのひとつです。過度な制限は、かえってストレスとなり、頭痛を悪化させてしまうこともあります。
大切なのは、「ご自身の場合どうか」を知ることです。頭痛ダイアリーをつけてみると、睡眠や体調、食事との関係が見えてくることがあります。「本当にその食べ物が毎回きっかけになっているのか」を一緒に確認していきましょう。
片頭痛は、決して気のせいでも、我慢するしかない病気でもありません。近年は治療法も大きく進歩しています。生活を必要以上に制限するのではなく、上手に付き合いながらコントロールしていくことが大切です。
「これって関係ありますか?」という小さな疑問でも、どうぞ遠慮なくご相談ください。お一人おひとりの生活に合わせた、無理のない方法を一緒に考えていきたいと思っています。










