脳神経外科 ふくおかクリニック

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片頭痛患者が抱えるスティグマ(偏見・差別)

例えば、朝からズキズキする頭痛に苦しみ、耐えきれず仕事を休もうとしたとします。すると上司や同僚から「頭痛くらいで休むの?」とか「薬を飲めば治るでしょう」と言われたら、心が折れてしまうでしょう。実際、片頭痛に悩む患者さんの中には、こうした言葉に傷ついた経験をお持ちの方も少なくありません。

片頭痛の苦しさは、痛みそのものだけではありません。周囲の理解不足や誤解によって生まれる心の負担も、問題です。病気への誤解や偏見によるこうした心の負担は、医療の分野では「スティグマ(偏見や差別)」と呼ばれています。今回は、片頭痛患者さんが抱えるスティグマと、その心への影響について、考えてみたいと思います。

片頭痛のつらさと周囲の理解のなさ

片頭痛は、ただの「頭痛」ではありません。ズキズキと脈打つ激しい痛みだけでなく、吐き気や光・音への過敏症状を伴い、日常生活や仕事に大きな支障をきたすれっきとした病気です。つらいときには家事や仕事を休まなくてはいけないこともあります。しかし残念ながら、痛みは目に見えないために周囲から理解されにくいのが現実です。

例えば学校や職場で「頭が痛いので早退します」と伝えたとき、相手によっては顔をしかめられることもあります。「たかが頭痛だろう」「気合が足りないんじゃないか」と心ない言葉を投げかけられたり、「本当は怠けたいだけでは?」と疑われたりすることもあります。他の病気なら「無理しないで」「お大事にね」と気遣ってもらえる場面でも、片頭痛だと冷たい反応をされてしまう――そんな周囲の理解のなさが、患者さんにとって大きなストレスになってしまうのです。

「甘え」や「気のせい」ではないということ

片頭痛は決して「甘え」や「気のせい」で起こるものではありません。患者さんの責任でも、性格の問題でもありません。片頭痛は脳の神経や血管の働きの変化によって生じる身体の病気です。ですから、「もっと我慢すれば良くなる」「気持ちの持ちようで何とかなる」といった考えは当てはまりません。

とはいえ、周囲に理解してもらえない状況が続くと、患者さんの中には「自分が怠けているのかもしれない」「周りに迷惑をかけている」と自分を責めてしまう方もいます。本当はそうではないのに、周囲からの偏見が強いと、患者さん自身が病気を恥じたり、自分の能力に自信を失ってしまったりすることがあります。こうした自己否定の気持ちが積み重なると、心の元気を奪い、日々の生活意欲まで低下させてしまうことがあります。

ひとりで抱え込まないで

片頭痛による痛みやつらさは、決して恥ずかしいことでも後ろめたいことでもありません。我慢したり隠したりする必要はありません。一人で抱え込まないでください。同じ片頭痛に悩む人はあなただけではなく、大勢います。日本では成人のおよそ1割に当たる数百万人が片頭痛に苦しんでいるとも言われており、決して珍しい病気ではありません。

周りに理解者がいないと感じるときは、信頼できる家族や友人に正直な気持ちを打ち明けてみてはいかがでしょうか。「頭が痛い」と言い出しにくい雰囲気があるかもしれませんが、あなたの大切な人であればきっと耳を傾けてくれるはずです。また、症状がつらいときは無理をせず休むことも大切です。「休んだら迷惑がかかるかも」などと考えすぎず、ご自身の体を最優先してください。

以下のポイントを覚えておいてください。

  • 片頭痛のつらさはあなたのせいではありません。 痛みが起きてしまうのは病気の仕組みによるもので、決して「弱さ」や「怠け」のせいではありません。
  • つらいときは遠慮せず休む勇気を持ってください。 無理をして悪化させるより、早めに休んで対処した方が結果的に周囲への迷惑も少なくて済みます。
  • あなたは一人ではありません。 日本中で多くの人が片頭痛に悩み、日々向き合っています。
  • 相談することは恥ではありません。 頭痛専門の医療機関など、片頭痛を真剣に受け止めてくれる場があります。

院長からの思い:安心できる場所であるために

自分のつらさを誰にも話せず、一人で涙をこらえている――そんな患者さんの姿を一人でも減らしたい。それが当クリニックの願いです。当クリニックは、患者さんにとって安心して自分の症状を打ち明けられる場所でありたいと考えています。お一人おひとりの痛みや不安に寄り添い、「ここなら自分のつらさを分かってもらえる」と感じていただけるよう心がけています。

片頭痛に対する世間の見方がすぐに変わるのは難しいかもしれません。しかし、信頼できる場で適切なケアを受け、周囲に少しずつ理解者が増えていけば、患者さんの心の負担はきっと軽くなるはずです。片頭痛とともに生きる皆さんは決して孤独ではないこと、そしてつらいときには安心して頼れる存在がいることを忘れないでください。

(この原稿は日本頭痛学会主催で2025年10月26日に開催された研修会での富士通クリニックの五十嵐久佳先生の講演を参考にさせていただきました。深謝申し上げます。)

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