11/10,
2025
手は震えないのに頭が揺れる…
「手は震えないのに、家族から“頭が揺れているよ”と言われた」「自分では気づかないけれど、動画で見ると確かに小刻みに動いている」こうしたご相談は、実は珍しくありません。頭だけが震える症状は、「本態性振戦(ほんたいせいしんせん)」と呼ばれる振戦の一つで、決してまれではありません。命に関わる病気ではありませんが、症状に気づいたとき、多くの方が「脳の病気では?」「パーキンソン病?」と不安を感じて受診されます。このコラムでは、頭部振戦の特徴や治療、受診の目安についてわかりやすく解説します。
本態性振戦とは?
振戦とは、自分の意思とは関係なく体が小刻みに震えてしまう状態のことです。本態性振戦はその中でももっとも多いタイプで、多くの方は「手の震え」として現れますが、頭部だけに出るタイプも一定数存在します。「うなずくように縦に揺れる」「左右に小さく揺れる」といった形で見られることが多く、本人よりも周囲の人が気づきやすいという特徴があります。本態性振戦は進行しても、寝たきりになったり、生活が大きく破綻するような病気ではありません。「揺れていても、健康そのもの」という方も多く、過度に心配する必要はありません。
治療は症状が気にならなければ、治療をしないという選択も十分にあります。
一方で、「人前で揺れが気になってしまう」「食事や会話のときに目立ってストレスになる」といった場合には、お薬で揺れを和らげる治療を行うことがあります。代表的な治療薬は、①β遮断薬(心臓の薬を少量使用)②抗てんかん薬(神経の興奮を抑える)これらは 「完全に止める薬」ではなく「生活が楽になる薬」 とご理解ください。
パーキンソン病との違いは?
患者さんの不安で多いのが「パーキンソン病ではないか」という心配です。本態性振戦とパーキンソン病は「震えが出る」という点では共通していますが、実はまったく別の病気です。
まず大きな違いは、震えが出るタイミングです。本態性振戦では「コップを持つ」「字を書く」「スプーンを運ぶ」など、体を動かしているときに震えが出やすいという特徴があります。一方でパーキンソン病の震えは、じっとして何もしていないときに出やすく、動き始めると少しおさまることがあります。頭部だけが揺れるケースでは、本態性振戦の可能性が高いといえます。
受診をおすすめするタイミングとしましては、
- 家族や周囲の人に揺れを指摘された
- 自分でも気になるようになってきた
- 他の病気との違いをはっきりさせたい
- 人前で気になることが増えた
不安を抱えたままインターネットで調べ続けるより、一度ご相談いただく方が安心につながると思います。いつでもいらしてください。










