09/26,
2026
【48】未破裂脳動脈瘤が見つかったら —その1―
当院では、頭痛などで受診された患者さんに、必要に応じてMRIと一緒に脳の血管を調べるMRA検査を行っています。その際、頭痛とは直接関係なく、偶然「未破裂脳動脈瘤」が見つかることがあります。
「脳に動脈瘤があります」と聞くと、多くの方がまず「破れないだろうか」と不安になります。未破裂脳動脈瘤は、破れない限り多くは症状を出しません。問題は、いったん破裂すると「くも膜下出血」という非常に重い病気を起こすことです。
くも膜下出血は、現在でも命にかかわる病気です。最近の国際的なガイドラインでも、発症した方の約4割が亡くなるとされ、救命できた場合にも、麻痺などの身体的な後遺症だけでなく、記憶力や集中力、疲れやすさ、気分の変化などが残ることがあります。自分で歩けるまで回復しても、発症前とまったく同じ仕事や生活に戻れるとは限りません。
だからこそ、未破裂の段階で動脈瘤が見つかったときには、「すぐに治療した方がよいのか」「安全に経過を見ていけるのか」をきちんと考える必要があります。ただし、見つかったすべての動脈瘤が破裂するわけではなく、すべてに治療が必要なわけでもありません。
未破裂脳動脈瘤は、決して珍しいものではありません
未破裂脳動脈瘤は、脳の動脈の一部がこぶのように膨らんだ状態です。成人のおよそ3~4%、つまり100人に3~4人程度にみられるとされています。最近はMRI・MRAの性能が向上し、2~3mm程度の小さな動脈瘤まで見つかるようになりました。
どのくらいの確率で破れるのでしょうか
日本では、全国の多くの脳神経外科施設が参加した「UCAS Japan」という大規模研究が行われました。5,000人以上の患者さんを前向きに追跡した、日本を代表する未破裂脳動脈瘤の研究です。
その結果、未破裂脳動脈瘤全体では、1年間に破裂する割合は平均約0.95%でした。しかし、この「約1%」だけで判断することはできません。動脈瘤は、大きさや場所、形によって破裂する危険性がかなり違うからです。
大きさ別の年間破裂率は、
3~4mm 約0.36%
5~6mm 約0.50%
7~9mm 約1.69%
10~24mm 約4.37%
でした。
一般的には大きくなるほど破裂する危険性が高くなり、特に7mmを超えるあたりから、その傾向がはっきりしてきます。
「5mm」が絶対的な境界ではありません
日本では、5~7mm以上は治療を検討する一つの目安とされています。しかし、「5mm以上なら手術」「5mm未満なら安全」と単純に分けることはできません。
同じ大きさでも、できている場所によって破裂しやすさが違います。特に「前交通動脈」や「内頸動脈―後交通動脈分岐部」にできた動脈瘤は、比較的小さくても注意が必要です。
大きさだけでなく「形」も見ます
動脈瘤の表面に、さらに小さな膨らみができることがあります。これを「ブレブ」と呼びます。UCAS Japanでは、このようなブレブを持つ動脈瘤は、そうでないものに比べて破裂する危険性が約1.6倍高いことが示されました。
そのため私たちは、動脈瘤を診るときに「何mmか」だけを見るのではありません。「どこにあるのか」「形は滑らかか」「小さな膨らみがないか」、さらに以前の画像と比べて大きくなっていないかを確認します。高血圧や喫煙、年齢、家族の中にくも膜下出血になった方がいるかどうかなども判断材料になります。
未破裂脳動脈瘤が見つかると、不安になるのは当然です。しかし、小さな動脈瘤の多くがすぐに破裂するわけではありません。大切なのは、「動脈瘤がある」という事実だけを怖がるのではなく、ご自身の動脈瘤の大きさ、場所、形をきちんと評価し、その方に合った方針を考えることです。
次回は、「経過観察を選んだ場合に、どのように見ていくのか」「どのような場合に治療を考えるのか」について、もう少し詳しくお話しします。










