10/18,
2026
【53】未破裂脳動脈瘤が見つかったら -その4-
― 新しい血管内治療「WEB」とはどのような治療でしょうか ―
これまで3回にわたり(コラム番号は【48】【49】【50】です)、未破裂脳動脈瘤が見つかったときの考え方、経過観察、そしてクリッピング術や血管内治療についてお話ししてきました。
脳動脈瘤の血管内治療は、この十数年で大きく進歩しています。従来のコイル塞栓術に加え、フローダイバーター、さらに最近では「WEB(ウェブ)」という新しい器具を使う治療も行われるようになりました。
WEBとはどのような器具でしょうか
WEBは「Woven EndoBridge」の略です。細い金属の線を細かく編み込んだ、丸みのあるメッシュ状の器具で、カテーテルを通して動脈瘤の中に一つ留置します。
コイル塞栓術では、動脈瘤の中に細いコイルを何本も入れて内部を詰めます。一方、WEBは動脈瘤の入口を内側から覆うように置き、動脈瘤の中へ流れ込む血液を弱めます。その後、内部に血栓ができ、時間をかけて動脈瘤が閉じていく仕組みです。
どのような動脈瘤に適しているのでしょうか
WEBは、すべての動脈瘤に使えるわけではありません。主な対象は、血管が枝分かれする場所にできた「入口の広い動脈瘤」です。医学的には、入口が4mm以上、または動脈瘤の大きさに比べて入口が広いものを「ワイドネック型」と呼びます。
このような動脈瘤では、単純なコイル塞栓術を行うと、コイルが元の血管側へはみ出す心配があります。従来は、血管内にステントを置いてコイルを支える方法や、開頭によるクリッピング術が必要になることがありました。
WEBは、器具の大部分を動脈瘤の中に留置し、多くの場合、動脈瘤の土台となる血管の中にステントを置かずに治療できることが特徴です。そのため、ステントを併用するコイル塞栓術やフローダイバーター治療に比べ、2種類の抗血小板薬を長期間続けずに済む場合があります。ただし、治療の前後に抗血小板薬が必要になることはあり、薬の種類や服用期間は、器具の位置や追加ステントの有無などによって異なります。ただし、実際の薬の使い方は、器具の位置や血管の状態に応じて慎重に決めます。
治療成績はどうでしょうか
国内12施設で行われた研究では、破裂例を含む129個の動脈瘤のうち、WEBを予定どおり留置できた割合は約98%でした。未破裂動脈瘤だけを見ると、1年後に「十分に閉じている」と評価された割合は約81%で、追加治療が行われた割合は約2%でした。
また、海外の前向き研究では、5年間の経過観察中に、WEBで治療した動脈瘤から出血した患者さんはいませんでした。一方で、すべてが完全に閉じるわけではなく、治療後もMRAや血管撮影による定期的な確認が必要です。
WEBにも危険性はあります
WEBは頭を開けずに治療できるため、身体への負担を小さくできる可能性があります。しかし、「新しい治療」「カテーテル治療」だから安全が保証されるわけではありません。
治療中に血のかたまりができて脳梗塞を起こすこと、器具が元の血管側へ出て血流を妨げること、カテーテルで動脈瘤を傷つけて出血することなどがあります。また、十分に閉じず、後からコイルやステントなどによる追加治療が必要になる場合もあります。
選択肢が増えたことが大切です
WEBは、従来の治療では難しかった入口の広い分岐部動脈瘤に対して、新しく加わった有力な選択肢です。しかし、WEBがクリッピング術やコイル塞栓術、フローダイバーターをすべて置き換えるわけではありません。
動脈瘤の場所、大きさ、形、そこから分かれる大切な血管との関係によって、最も適した治療法は異なります。新しい治療が増えたということは、誰もが新しい方法を受けるべきだという意味ではなく、一人ひとりの動脈瘤に合った方法を、より丁寧に選べるようになったということです。
未破裂脳動脈瘤が見つかったときには、治療を急いで決めるのではなく、専門施設でそれぞれの方法の利点と危険性について説明を受け、納得したうえで方針を決めていくことが大切です。









