09/27,
2026
【49】未破裂脳動脈瘤が見つかったら ーその2ー
前回は、未破裂脳動脈瘤がどのくらいの頻度で見つかるのか、また、どのような動脈瘤が破裂しやすいのかについてお話ししました。
未破裂脳動脈瘤が見つかった患者さんには、「今すぐ治療する必要はありません。しばらく経過をみましょう」とお話しすることがあります。
すると、「何もしなくて大丈夫なのでしょうか」「いつ破れるかわからないまま生活するのは心配です」と不安に思われる方も少なくありません。
しかし、ここでいう「経過観察」は、決して「何もしない」「放っておく」という意味ではありません。
経過観察では、何を見ているのでしょうか
未破裂脳動脈瘤を定期的にMRAで検査する一番大きな目的は、動脈瘤が以前と変わっていないかを確認することです。
特に大切なのは、
・大きくなっていないか
・形が変わっていないか
・新しく小さな膨らみ(ブレブ)ができていないか
という点です。
動脈瘤は、発見されたときの大きさや形だけで、その後の状態がずっと決まるわけではありません。何年もまったく変化しないものもあれば、少しずつ大きくなったり、形が変化したりするものもあります。
複数の研究をまとめた報告では、経過観察中の未破裂脳動脈瘤のうち、年間およそ2~3%程度に増大がみられています。
つまり、大部分の動脈瘤は短期間では変化しません。しかし、その中から変化する動脈瘤を見つけることが、定期検査の大切な役割なのです。
大きくなった場合は、もう一度方針を考えます
特に重要なのは、「以前より大きくなった動脈瘤」です。
海外の大規模な研究では、経過観察中に1mm以上の増大が確認された動脈瘤では、その後1年間に破裂した割合が約4.3%でした。その1でお話しした日本の統計で、未破裂脳動脈瘤全体の年間破裂率が1%弱だったことを考えると4倍以上の危険性となります。
これは、すべての未破裂脳動脈瘤の破裂率ではありません。「大きくなったことが確認された動脈瘤」だけを集めた数字です。
したがって、経過観察中に明らかな増大や形の変化がみられた場合には、それまでの「このまま経過をみましょう」という判断をいったん見直し、治療が必要かどうかを改めて検討します。
どのくらいの間隔で検査するのでしょうか
これについては、すべての患者さんに共通する決まりがあるわけではありません。
一つの目安として、動脈瘤が初めて見つかった場合には、まず6か月から1年後にMRAを行い、変化がないことを確認します。その後は、状態に応じて1年ごと、あるいは1~2年ごとに検査を続けることがあります。
ただし、大きさ、場所、形、ご年齢などによって検査間隔は変わります。少し気になる形をしている場合や、以前より大きくなった可能性がある場合には、より短い間隔で確認することもあります。
また、数年間変化がないからといって、将来も絶対に変化しないとは言い切れません。長い間安定していた動脈瘤が、その後に大きくなることも報告されています。
日常生活でできることもあります
経過観察中に特に大切なのは、血圧をきちんと管理することと、喫煙されている方は禁煙することです。
高血圧や喫煙は、脳動脈瘤の破裂と関連することが知られています。必要以上に生活を制限する必要はありませんが、血圧の治療を続け、健康的な生活を心がけることはとても大切です。
「経過観察」は、慎重に見守っていくという治療方針です
未破裂脳動脈瘤が見つかっても、すぐに治療する必要がない場合はたくさんあります。
そのような患者さんに対する経過観察は、「何もしない」のではありません。
その時点で、動脈瘤が破裂する危険性と治療によって生じる危険性の両方を考え、治療を行うよりも慎重に見守る方がよいと判断されたら、定期的に画像を確認していく。もし変化が現れたときには、その時点でもう一度方針を見直す。
これが未破裂脳動脈瘤の「経過観察」です。
動脈瘤があると言われると、不安が完全になくなることは難しいかもしれません。しかし、経過観察を選ぶのにもきちんとした理由があります。破裂する危険性だけを見るのではなく、治療そのものにも一定の危険性があるため、その両方を天秤にかけ、その患者さんにとってより適切な方法を選んでいるのです。
では、実際に治療が必要と判断された場合には、どのような治療を行うのでしょうか。また、治療にはどの程度の危険性があるのでしょうか。
次回は、従来から行われてきた「クリッピング術」と、近年大きく進歩している「血管内治療」について、それぞれの特徴や治療成績、そして治療に伴うリスクも含めて詳しくお話ししたいと思います。










