07/19,
2026
【41】頚部頚動脈エコーで「狭窄があります」と言われたら
頸動脈エコーで「狭窄があります」と言われたら
―血管が狭くなると、なぜ脳梗塞につながるのでしょうか―
頸動脈は、心臓から脳へ血液を送る大切な血管です。頸動脈エコーで「プラークがあります」「血管が狭くなっています」と言われると、「このまま脳梗塞になるのでは」と不安になる方も多いでしょう。
頸動脈狭窄は、煙突の内側に少しずつすすがたまり、空気の通り道が狭くなっていく様子を思い浮かべると分かりやすいかもしれません。
ただし、プラークは単なる汚れではありません。コレステロールなどが血管の壁にたまってできる、動脈硬化のかたまりです。これが厚くなるにつれて、脳へ向かう血液の通り道が細くなります。
なぜ狭窄が脳梗塞につながるのでしょうか
理由は二つあります。
一つは、狭窄が非常に強くなると、脳へ届く血液が不足することです。
もう一つは、プラークの表面に血栓ができることです。
血小板は、本来、血管に傷がついたときに集まって出血を止める役目を持っています。ところが、プラークの表面がでこぼこしたり傷ついたりすると、そこにも血小板が集まり、血のかたまりを作ることがあります。
その血栓の一部がはがれて血流に乗り、脳の細い血管をふさぐと脳梗塞になります。頸動脈狭窄による脳梗塞では、この**「血栓が脳へ飛ぶ」仕組み**が重要です。
抗血小板薬は何のために使うのでしょうか
抗血小板薬は、一般に「血液をさらさらにする薬」と呼ばれますが、血液を薄める薬ではありません。血小板が集まって血栓を作る働きを抑える薬です。
したがって、プラークの表面に血栓ができ、それが脳へ飛ぶのを防ぐ目的で使います。ただし、プラークを小さくしたり、狭くなった血管を広げたりする薬ではありません。
症状のない軽度から中等度の狭窄では、血圧、悪玉(LDL)コレステロール、血糖の管理、禁煙、運動などによって、動脈硬化を進ませないことが基本です。定期的にエコーを行い、プラークや狭窄が進んでいないかを見守ります。
高度狭窄では、こうした治療に加えて抗血小板薬の使用を検討します。その際には、糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙歴などが重なっているか、心臓や足の血管にも動脈硬化の病気があるかを確認し、頸動脈だけでなく全身の血管を守るという視点で判断します。
一方、抗血小板薬には、胃腸や脳などからの出血を増やす面もあります。脳出血、胃腸出血、胃潰瘍、貧血などがないかを確認し、脳梗塞を防ぐ利益と出血の危険を比べて、一人ひとり慎重に決めます。
狭窄が高度になったら
一般に、後ほど説明するNASCET(ナセット)法で70%以上を高度狭窄と呼びます。エコーで高度狭窄が疑われた場合には、MRAやCT血管撮影などで、血管の状態をさらに詳しく確認します。
症状のない高度狭窄では、全員が手術になるわけではありません。
狭窄の進み方、プラークの状態、年齢や全身状態、治療に伴う危険などを検討し、治療による利益の方が大きいと考えられる場合に、プラークを取り除く頸動脈内膜剥離術や、血管の内側から広げるステント治療を考えます。
この症状が出たら、治っても待たないでください
一方、次のような症状が出た場合は話が別です。
片方の目が突然見えにくくなる、顔や手足の片側が動かしにくい・しびれる、言葉が出ない、相手の話が理解できない――こうした症状は、頸動脈から血栓が脳へ飛んだサインかもしれません。
数分で元に戻っても、一過性脳虚血発作の可能性があります。
症状を伴う頸動脈狭窄では、NASCET法で50%以上から手術を検討し、70%以上ではその必要性がさらに高くなります。発症後の早い時期は脳梗塞を繰り返す危険があるため、症状が消えても様子を見ず、直ちに救急受診してください。
頸動脈狭窄症は、検査の数字だけで怖がる病気ではありません。しかし、症状を見逃してよい病気でもありません。
症状がなければ、落ち着いて詳しく評価し、動脈硬化を進ませない治療を続けること。症状が出たときは、ためらわず救急受診すること。
この二つを覚えておいてください。
【参考】治療方針に使われる狭窄率
手術やステント治療の基準には、主にNASCET(ナセット)法が使われます。
これは、最も細くなった部分の内径を、その先にある正常な内頸動脈の内径と比べる方法です。
狭窄率
=〔1-最も細くなった部分の内径÷その先の正常な血管の内径〕×100
例えば、その先の正常な血管が6ミリ、最も細くなった部分が3ミリであれば、NASCET法では50%狭窄です。
エコーでは、血管を輪切りにして測る「面積法」も使われます。血管を単純な円として考えると、面積法75%は、径でみるとおよそ50%に相当します。
ただし、NASCET法とは基準にする血管の場所が異なるため、厳密な換算ではありません。当院では、狭窄率の数字だけでなく、血流速度、プラークの状態、症状の有無を合わせて総合的に判断しています










