08/23,
2026
【44】突然の後頭部痛にご注意ください
血管の壁が裂ける「椎骨動脈解離」
後頭部の痛みは、首や肩のこりによる緊張型頭痛や、大後頭神経痛などでも起こります。しかし、その中に、脳梗塞やくも膜下出血につながる「椎骨動脈解離」が隠れていることがあります。高齢者だけの病気ではなく、若い方にも起こります。特に注意していただきたいのは、痛みの強さだけではなく、痛みが突然始まったかどうかです。
椎骨動脈と血管の壁
椎骨動脈は、頸動脈の後ろ側に位置し、首の骨である頸椎の左右にある『横突孔』という穴の中を通って頭蓋内へ入り、脳幹や小脳へ血液を送る大切な血管です。血管の壁は一枚の膜ではなく、内側から「内膜」「中膜」「外膜」という三つの層でできています。内膜は血液に直接触れる薄い内張り、中膜は血管の形や強さを保つ中心部分、外膜は血管を外側から支える層です。
「解離」とは、この血管の壁の一部が裂け、そこへ血液が入り込み、壁の層と層の間を押し分けてしまう状態です。血液が壁の内側へ広がるか、外側へ広がるかによって、起こる問題が異なります。
内側へ広がると、脳梗塞の原因になります
血液が内膜の下から中膜の内側寄りへ入り込むと、血管の内膜が血液の通り道へ押し出されます。そのため血管が細くなり、狭窄や閉塞を起こします。また、傷ついた部分に血の塊ができ、それが流れて先の血管を塞ぐことも起こりえます。
椎骨動脈は脳幹や小脳を養っているため、血流が途絶えると脳梗塞を起こし、強いめまい、立てない・まっすぐ歩けない、物が二重に見える、ろれつが回らない、飲み込みにくい、顔や手足のしびれ、力が入らない、激しい吐き気や嘔吐などが現れます。後頭部痛だけで始まり、後からこのような症状が加わることもあります。
外側へ広がり、破れるとくも膜下出血になります
一方、血液が血管壁の外側へ広がると、血管全体がこぶのように膨らむことがあります。これを解離性動脈瘤といいます。頭蓋内の椎骨動脈は、首を走る部分と比べて、血管壁の外側の構造が薄いという特徴があります。解離が血管壁の外側まで進み、最外層が破れると、くも膜下出血を起こします。突然、後頭部を殴られたような激痛が起こり、嘔吐、意識がぼんやりする、倒れるなどの症状を伴うことがあります。再出血すると命にかかわるため、一刻を争います。このようなときは自分で運転せず、直ちに救急車を呼んでください。
血管の「内側」と「外側」の両方を見る検査
椎骨動脈解離の診断では、血液の通り道だけでなく、血管そのものがどのような形になっているかを見ることが大切です。
MRA(MRIを使った脳の血管撮影)は、主に血液が流れている血管の内側、すなわち「内腔」を映します。これにより、血管が細くなっている、途切れている、あるいは部分的に広がっていることが分かります。
一方、BPAS(ビーパス)という撮影法は、椎骨動脈から脳底動脈にかけての血管の壁の輪郭を映します。MRAで見える内側の血液の通り道と、BPASで見える壁の形を見比べることで、形状が違うといった解離に特徴的な変化を捉えやすくなります。
「突然始まったか」を忘れないでください
緊張型頭痛は、首や肩のこりとともに徐々に重くなり、締めつけられるように痛むことが一般的です。大後頭神経痛は、後頭部に電気が走るような短い痛みを繰り返すことが多い病気です。
これに対し椎骨動脈解離では、「振り向いた瞬間」「運動中」「何時何分から」と、痛みが始まった時点を比較的はっきり覚えていることがあります。必ずしも耐えられないほどの激痛とは限りません。程度が中くらいでも、今までと違う片側の後頭部痛が、ある瞬間に突然始まり、その後も続く場合は注意が必要です。
発症を完全に防ぐ方法はありませんが、血管への負担を減らすうえで、日常生活で特に大切なのは、高血圧をきちんと管理することです。家庭でも血圧を測り、処方された薬を続け、喫煙を避けましょう。
後頭部が痛むたびに怖がる必要はありません。しかし、「いつもの頭痛と違う」「ある瞬間に突然始まった」という感覚は、身体からの大切な警告かもしれません。迷ったときには我慢せず、早めに医療機関へ相談してください。
★疾患の概要はホームページにすでに書いてありますが、今回はかなり詳しく説明させていただきました。










