08/13,
2026
【43】片頭痛の予防に、もう一つの飲み薬
アトゲパント(アクイプタ®)という新しい選択肢
片頭痛は、単に「頭が痛い」だけの病気ではありません。強い痛みや吐き気、光や音への過敏のため、仕事や家事、学校生活が難しくなることがあります。
発作のない日にも、「また頭痛が起こるのではないか」と心配になり、外出や旅行の予定をためらってしまう方も少なくありません。
発作の回数が多い場合には、痛みが始まってから薬を飲む治療だけでなく、頭痛そのものを起こりにくくする「予防治療」が大切です。
近年、この予防治療に、片頭痛と深く関係するCGRPという物質の働きを抑える薬が使われるようになりました。
以前のコラム(【27】2025年12月14日)では、飲み薬のCGRP受容体拮抗薬であるリメゲパント(ナルティーク®)をご紹介しました。
ナルティーク®は、片頭痛発作が起きたときの治療と、発作を起こりにくくする予防治療の両方に使えることが特徴です。予防目的では、1日おきに服用します。
そして2026年4月、新たな飲み薬であるアトゲパント(アクイプタ®)が発売されました。
アクイプタ®も、ナルティーク®と同じくCGRP受容体の働きを抑える薬ですが、1日1回、毎日服用する予防治療薬です。現在は予防治療を目的とした薬であるため、実際に発作が起きたときには、別の急性期治療薬を使用します。
アクイプタ®の特徴の一つは、反復性片頭痛だけでなく、頭痛の日が月に15日以上となる慢性片頭痛の患者さんを対象とした臨床試験でも、予防効果が確認されていることです。
慢性片頭痛では、頭痛が生活の背景のように続き、調子のよい日に予定を立てることさえ難しくなる場合があります。
予防治療の目標は、必ずしも頭痛を完全にゼロにすることだけではありません。頭痛の日や頓服薬を使う日を減らし、仕事や家事、趣味など、これまで頭痛によって失われていた日常生活を少しずつ取り戻すことも大切な目標です。
それでは、ナルティーク®とアクイプタ®のどちらがよく効くのでしょうか。
現時点では、すべての患者さんに一方の薬が優れているとは言えません。
両剤は同じCGRP受容体を標的としていますが、薬の分子、服用間隔、体内への吸収や代謝、副作用の現れ方は同じではありません。そのため、一方の薬で十分な効果が得られなかった方が、もう一方へ変更すると改善することがあります。もちろん、その逆もあり得ます。
当院の経験ではナルティークの効果が不十分のためにアクイプタに変更して明らかな効果を認めた患者さんがいらっしゃいます。将来的にはおそらくその逆のことも出てくると思いますが。
大切なのは、治療の選択肢が増えたことです。
これまでは、経口CGRP受容体拮抗薬による予防治療では、ナルティーク®の効果がはっきりしない場合や、副作用のため継続できない場合に、同じ種類の別の飲み薬へ変更することができませんでした。
アクイプタ®が加わったことで、頭痛の頻度、生活への影響、体質、持病、併用している薬、服用のしやすさなどに合わせて、治療を調整しやすくなりました。
また、片頭痛の予防には、以前よりCGRPに関連する注射薬(現在は3種類)もあります。これらは高い予防効果が期待できる、とても大切な治療選択肢です。
一方で、主に腹部などへの皮下注射が必要です。患者さんによっては、注射した場所が膨隆してぷくっと盛り上がる、赤くなる、腫れる、かゆくなる、痛むといった注射部位反応が現れることがあります。また、頻度は高くありませんが、アレルギー反応が起こることもあります。
効果は十分に得られていても、こうした注射部位反応やアレルギー反応のために、注射治療を続けることが難しい患者さんもおられます。
そのような患者さんにとって、CGRPの働きを抑える治療を飲み薬で続けられることは、大きな福音です。
もちろん、飲み薬にも副作用はあります。アクイプタ®では便秘、吐き気、食欲低下などがみられることがあります。効果だけでなく、体調や副作用を確認しながら、その方に合った薬を選ぶことが大切です。
最初に使った薬が十分に効かなかったり、副作用のため続けられなかったりしても、治療の道が閉ざされたわけではありません。
選択肢が増えることは、患者さん一人ひとりに合う治療を探すための「次の一手」が増えることです。
自己判断で薬を中止したり変更したりせず、頭痛日記などで経過を確認しながら、主治医と相談して、ご自身に合った治療を一緒に見つけていきましょう。










