07/12,
2026
【40】繰り返すめまい
「良性」と言われても、もう一度確認したい理由
外来でめまいの患者さんを診察していると、「以前、耳鼻科で良性発作性頭位めまい症と言われました。今回も同じでしょうか」と尋ねられることがあります。
良性発作性頭位めまい症は、めまいの原因としてとても多い病気です。朝起き上がった時、寝返りを打った時、上を向いた時などに、急にぐるぐる回るようなめまいが起こります。吐き気や嘔吐を伴うこともあり、患者さんにとっては大変つらい症状です。じっとしていると少し落ち着きますが、また動こうとするとめまいが出る、という経過をとることがあります。
名前に「良性」とついているため、「軽いめまい」「もう再発しないめまい」と思われる方もおられます。しかし、ここでいう良性とは、命にかかわる病気ではないことが多い、という意味合いです。症状が軽いという意味ではありませんし、一度きりで終わるという意味でもありません。実際、良性発作性頭位めまい症は繰り返すことがあります。
ただし、ここで大切なことがあります。めまいを繰り返すからといって、毎回「また良性発作性頭位めまい症でしょう」と決めつけてよいわけではありません。めまいの中には、小脳や脳幹の脳梗塞や腫瘍、聴神経腫瘍など、見逃してはいけない病気が隠れていることがあります。
私はこれまで、聴神経腫瘍に対するガンマナイフ治療を500例以上経験してきました。聴神経腫瘍は、名前に「聴神経」とつきますが、多くは体のバランスに関係する前庭神経から発生します。そのため、めまいやふらつきと関係することが多くあります。
ところが、聴神経腫瘍の患者さんが、必ずめまいを訴えるとは限りません。腫瘍がゆっくり進行すると、脳がその状態に少しずつ慣れてしまい、ご本人に詳しくお聞きしても「昔めまいがあったかどうか、よく覚えていません」とおっしゃることがあります。実際には詳しい神経検査で前庭機能に障害があっても、自覚症状としてははっきりしないことがあるのです。
また、聴力の低下や耳鳴りについても、患者さんご自身が気づいていないことがあります。神経学的な診察ももちろん大切ですが、微妙な異常を短時間の外来診療だけで完全に判断することは簡単ではありません。
そのため当院では、めまいで受診された患者さんにはMRIを行い、脳幹、小脳、さらに内耳道まで丁寧に確認しています。内耳道は聴神経腫瘍が見つかることのある場所であり、通常の脳の確認だけでなく、この部分を細かく見ることが大切です。めまいを「耳の病気」と決めつける前に、まず見逃してはいけない病気がないかを確認することが大切だと考えています。
もちろん、MRIを撮ればすべてが解決するというわけではありません。めまいの診断には、症状の出方、持続時間、頭の向きとの関係、吐き気の程度、耳の症状、神経所見、画像所見などを総合して考える必要があります。検査だけでも、問診だけでもなく、全体を合わせて判断することが大切です。
「前にも同じめまいがあったから、今回も大丈夫」と思いたくなるお気持ちはよくわかります。多くのめまいは、命にかかわるものではありません。しかし、繰り返すめまい、いつもと少し違うめまい、歩きにくさや強いふらつきを伴うめまい、聞こえにくさや耳鳴りを伴うめまいでは、一度きちんと確認しておくことをおすすめします。
患者さんを不安にさせたいわけではありません。むしろ、不安なまま過ごさないために、必要な確認を行うことが大切です。めまいを「よくあること」と片づけず、原因を丁寧に考えること。それが、安心につながるめまい診療だと考えています。










