05/03,
2026
【34】その顔面痛、帯状疱疹かもしれません
日常診療において、顔面の痛みや後頭部痛を訴える患者さんは少なくありません。特に三叉神経痛や大後頭神経痛は、頭痛外来では比較的よく遭遇する疾患です。しかしその中に、見逃してはならない病態が潜んでいることがあります。それが帯状疱疹です。
帯状疱疹というと「水ぶくれが出る皮膚の病気」という印象を持たれている方が多いのですが、実際には皮疹が出現する前から神経痛が始まることが知られています。この「発疹前の痛み」が診断を難しくする最大の要因です。
例えば、顔面の三叉神経領域に帯状疱疹が発症した場合、患者さんは顔面の強い痛みを訴えます。この痛みはときに電撃痛様であり、典型的三叉神経痛(食事、洗面、歯磨き、しゃべるなどの刺激で強い痛みが誘発され、じっとしていると痛みは和らいでゆく)と紛らわしいことがあります。しかし典型的三叉神経痛と異なり、帯状疱疹による痛みは持続性であることが多く、安静時にも痛みが続く点が特徴です。また、触刺激による誘発が明確でないことも少なくありません。
さらに診断を難しくするのが、「皮疹がまだ出ていない段階」での受診です。この時期には、非定型顔面痛として扱われてしまうこともあります。実際、後から水疱が出現して初めて帯状疱疹と判明するケースも少なくありません。
同様のことは後頭部の痛みにおいても起こります。大後頭神経痛と診断された患者さんの中に、後日帯状疱疹の皮疹が出現し、原因がウイルス感染であったと分かるケースがあります。この場合、通常の大後頭神経痛よりも痛みが強く、持続的であることが多い印象があります。皮膚の違和感や過敏性が強い場合には、特に注意が必要です。
このように帯状疱疹は、頭痛・顔面痛の鑑別診断として非常に重要です。特に「いつもと違う強さの神経痛」「持続する痛み」「神経の分布に一致した痛み」がある場合には、皮疹がなくても帯状疱疹を疑う必要があります。また、顔面で帯状疱疹による痛みで多い部位は、三叉神経第1枝(おでこの部分)であり、一方、痛みが刺激で誘発される典型的三叉神経痛は第2、第3枝のほほから、顎にかけて(または歯の痛み)が多いという特徴があります。
もう一つ重要なのが、帯状疱疹後神経痛の存在です。皮疹が治った後も痛みが長期間持続することがあり、患者さんの生活の質を大きく低下させます。特に高齢者ではその頻度が高く、初期治療の遅れがリスクを高めることが知られています。そのため、早期に診断し、抗ウイルス薬を開始することが極めて重要です。
近年では、帯状疱疹を予防するワクチンも普及してきました。不活化ワクチンは発症予防効果が高く、帯状疱疹後神経痛の予防にも有効とされています。50歳以上の方や基礎疾患をお持ちの方には、積極的に検討していただきたい予防手段です。
帯状疱疹は皮膚科の病気と考えられがちですが、神経痛として最初に現れる以上、私たち頭痛専門医の役割も非常に大きいと考えています。
顔面痛や後頭部痛でお困りの方は、どうぞお気軽にご相談ください。早期診断と適切な治療が、その後の経過を大きく左右します。










