脳神経外科 ふくおかクリニック

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【35】認知症の「徘徊」―ご家族が知っておくべき対策―

認知症の患者さんを介護されているご家族にとって、「徘徊」は非常に大きな不安のひとつです。そして徘徊の最も怖い点は、「行方不明につながる可能性がある」ということです。

実際に日本では、年間で1万8千人以上の認知症の方が行方不明として届け出されています。これは決して特別な出来事ではなく、どのご家庭でも起こり得る現実です。

さらに知っておいていただきたいのは、その“その後”です。
行方不明となった方の中には、残念ながら亡くなった状態で発見されるケースもあり、その多くが自宅から比較的近い範囲(数キロ圏内)で見つかっています。

つまり、「遠くへ行ってしまう」のではなく、
「近くにいるのに見つけられない」ことが問題なのです。

そして時間が経つほど、発見は難しくなり、命に関わるリスクが高まります。

なぜ徘徊は起こるのか

徘徊は単なる「目的のない行動」ではありません。
本人なりの理由があります。

・昔の家に帰ろうとする
・仕事に行こうとする
・家族を探している
・トイレや食事などの欲求

これらは「記憶障害」と「見当識障害」によるものです。
したがって、「止める」だけでは解決せず、環境で支えることが重要になります。

GPSは有効か?―現実的な位置づけ

近年、GPS機器は非常に進歩し、徘徊対策として有効な手段のひとつです。
ただし、ここで大切なことがあります。

GPSは
「徘徊を防ぐ道具」ではなく「見つけるための道具」です。

そしてもう一つ重要なのは、
持っていなければ意味がないという点です。

GPSの種類と選び方

現在、さまざまなGPS機器が市販されています。

・小型タグ型(バッグやポケット)
・腕時計型
・靴に組み込むタイプ

価格も本体5,000円〜2万円程度、通信費は月500〜1,500円程度と幅があります。

どれが一番良いかというご質問をよく受けますが、正解は一つではありません。

ご本人の生活習慣に合うものを、ご家族が選ぶことが最も重要です。

GPSを“使える形にする”ために

実際の現場で感じるのは、「機器の性能」よりも「使い方」で結果が大きく変わるということです。

①生活に組み込む

・衣類に縫い込む
・ベルトやインナーに固定

→「持たせる」のではなく「一体化」させます。

②複数で使う(非常に重要)

一つだけでは不十分です。

・靴+衣類
・衣類+バッグ

組み合わせることで現実的な対策になります。

③違和感を減らす

・小型のものを選ぶ
・普段使いの物に近づける

→違和感は拒否につながります。

④行動範囲を知る

多くの方は遠くへは行きません。
昔の生活圏やよく行く場所を知っておくことで、捜索は大きく変わります。

最も大切なこと

徘徊対策で最も重要なのは、「早く気づくこと」そして「早く探すこと」です。

先ほど述べたように、多くの場合「近くにいるのに見つからない」状態です。

GPSはその助けになりますが、
・外出に気づく仕組み
・近隣との連携

こうした体制と組み合わせてこそ、本当の意味を持ちます。

最後に

認知症の徘徊は、ご家族の努力不足ではありません。
病気によって起こる症状です。

だからこそ、
「止める」のではなく
「見守る仕組みを作る」ことが大切です。

GPSについては、ぜひ次のように考えてください。

「GPSは持たせるものではなく、生活に組み込むものです」

機器そのものよりも、使い方が結果を左右します。
ご本人の生活に合った方法を、ご家族と一緒に考えていくことが何より重要です。

当院でも、個々の状況に応じた対策について可能な限りご相談をお受けしております。

 

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